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生き方 考え方

常 岡 一 郎
中 心 社 刊
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目の前に指をもってくる。その指のかげにかくれて富士山も見えない。
富士山が小さいのではない。指が大きくなったわけでもない。ただ指が
からだに近いからに過ぎない。近いものが大きく見える。正しい判断が
狂いやすい。

子供が死ぬ。神も仏もないものかとなげく。しかし、毎日人間は二十万
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人くらいこの世から消える。来る日も来る日も二十万人もの人が死ぬの
である。自分もやがては死ぬことにきめられている。ただいつその順番
がまわって来るか、それは時間の問題である。その二十万の一人に自分
の子供がはいった。こう思えば二十万人をめぐる悲しみの一つが自分の
悲しみといえる。



ものは考え方でずいぶん悟りもかわる。泣いていたことも、悟ればにっ
こり笑える場合もある。ここに人間の生きる味わいがある。今うれしい
からといって明日はどんなことがわきおこるか、さっばりわからない。
わからぬままで手さぐりの生き方もある。めくらめっぽうに突っ走る生
き方もある。生き方は千差万別である。その生き方をあやつるものは、
その人の心の持ち方、ものの考え方が主体になっている。
健康学園では毎朝朝礼をしている。私はそこで若い人や病む人にお話を
している。その話の中から片言を集めて、中心に 「朝夕にかえりみて」
と題して書いて来た。今これをまとめて上梓することにした。


猛獣でも生まれた時はやさしい。すぐ殺せる。どんな病いでもはじめは
小さい。血を清めておけば早く片付く。どんな災難でも一日一日心がけ
て心を清め、考え方を正して生きたら、たやすくさけられる。どうせ死
ぬまでは生きているのである。生き甲斐のあるたのしさ、希望にもえる
考え方、これがどんなに大切であるかを思う。


私は毎日のようになやみを相談される。ちょっと考え方をかえて貰った
ら、涙がすぐ笑顔にかわる。どんなに怨んでいた人も、相手にわびる心
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までわく。これは人間の尊さである。なるほど、そうであったか、よし
わかったといえば心は晴れる。生き生きして来る。


ここに集めたのは具体的な例は少ない。片言集ともいえる。よりたのし
い人生を築いて貰うお役に立てば幸せと思う。
  昭和四十一年陽春



目   次
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序・・・・・・・・・・・・・・・・・ 一

運命の計算

 頭は月に 運は海底に・・・・・・・一二


 推理の反省 宗教は阿片か・・・・・一四
 計算わすれ 見えぬ人愛・・・・・・一六
 重荷を負う 責任回避・・・・・・・一八

 運命の計算 不運の反省・・・・・・二〇

 出たもの 凹んだもの・・・・・・・二二
 子孫を守る道 父祖の道・・・・・・二四
 掴み方 使い方・・・・・・・・・・二六
 ちょうどよい 喰いちがい・・・・・二八

 勝つ工夫 負ける工夫・・・・・・・三〇

 天命 運命・・・・・・・・・・・・三二
 外からの敵 内からの敵・・・・・・三四
 終点 出発点・・・・・・・・・・・三六
 極楽の絵 地獄の絵・・・・・・・・三八

 自らの光 他の光・・・・・・・・・四〇

 節をこえる 節から折れる・・・・・四二
 自己に克つ 自己に負ける・・・・・四四
 善根 雑草・・・・・・・・・・・・四六


宇宙を見つめて

 進化 退化・・・・・・・・・・・・五○

 作るもの 作られるもの・・・・・・五二
 流転 停滞・・・・・・・・・・・・五四
 天 地・・・・・・・・・・・・・・五六
 育つもの 育てるもの・・・・・・・五八

 散る桜 残る桜・・・・・・・・・・六〇

 常時不動 変転無常・・・・・・・・六二
 材料がいる 材料がいらぬ・・・・・六四
 根幹 枝葉・・・・・・・・・・・・六六
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 人間の根元 人間の枝葉・・・・・・六八

 自分の宗教 他の宗教・・・・・・・七〇

 鍋と水 コンロと火・・・・・・・・七二
 大地からわく 心の中にわく・・・・七四
 自然の厳しさ 人生の楽しさ・・・・七六
 理に順うもの 理に叛くもの・・・・七八

 対立で滅びる 対立で伸びる・・・・八〇

 死ぬまで生きる 生きながら死ぬ・・八二
 楽の苦しみ 苦しみの楽・・・・・・八四


心のあり方 使い方
 恐れる感情 不安去る理性・・・・・八八

 身のたしなみ 心の豊かさ・・・・・九〇

 自由 不自由・・・・・・・・・・・九二
 配る生活 守る生活・・・・・・・・九四
 許す心 責める心・・・・・・・・・九六
 わかったこと わからぬこと・・・・九八

 愛する心 にくむ心・・・・・・・一〇〇

 愛する立場 愛されぬ立場・・・・一〇二
 胸の道 形式の道・・・・・・・・一〇四
 今持つもの 失われたもの・・・・一〇六
 難しいこと たやすいこと・・・・一〇八

 順応 おべっか・・・・・・・・・一一〇

 第一流の人 第三流の人・・・・・一一二
 注意する 差出口をきく・・・・・一一四


生き方 考え方
 向上・堕落・・・・・・・・・・・一一八

 赤信号 黄信号・・・・・・・・・一二〇

 好き 嫌い・・・・・・・・・・・一二二
 隙に合わせる 隙を見のがす・・・一二四
 名前 実体・・・・・・・・・・・一二六
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 地獄 極楽・・・・・・・・・・・一二八

 親しみ 疎遠・・・・・・・・・・一三〇

 奉仕の喜び 求める不快・・・・・一三二
 災難を落す人 災難を拾う人・・・一三四
 貯めた財産 貯まった財産・・・・一三六
 潤む道 掴まれる道・・・・・・・一三八

 人間の完成 人間の未完成・・・・一四〇

 外にはない 室は内にある・・・・一四二
 後戻りがない 後戻り出来る・・・一四四
 あてになる あてはずれ・・・・・一四六
 構えをつくる 構えにおどる・・・一四八

 使える人 仕える人・・・・・・・一五〇

 惜しまず使う 惜しんで浪費・・・一五二
 乏しさ ぜいたく・・・・・・・・一五四
 男性 女性・・・・・・・・・・・一五六



 生き方 考え方


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